デラシネのーと

けーごの雑記

【定期】15分小説 ひまわり

【ルール】

・制限時間は15分

・一文ごとに新しい設定を盛り込むこと

・特に書くネタがない日はこれをやること

 

 

ひまわり

僕の名前は「ヒュー君」という。風の子だからそういう名前なんだそうだ。僕がどこからやってきたのかを僕は知らないけれど、大人なら知っているかもしれない。

僕の現在の家はリビング九畳の「わんけー」というやつで、部屋の真ん中には大きなひまわりが生えている。普通のひまわりと違って、夏になると枯れるやつだ。中央に向かってしぼんでいき、最後に四角い実をつける。その実はルービックキューブにとても似ていて、そんな風に出来上がった立方体が重なり合い、部屋の中央に山を作っている。ひまわりはキク科だから、人の話を聞かない僕の家に生えてくるのは語呂的に収まりが良かった。

ある台風の日に、僕のところにも召集がかかった。この召集は定期的にかかるもので、僕が生まれた瞬間からすでにルールに組み込まれていたものだった。

この日だけ僕らは半透明になって、街中を自由に駆け回ることできる。とはいえ、別にその行動が本意というわけでは全くないのだった。まず僕は半透明になることが、他者に対して存在を薄れさせること自体が嫌いだったし、(それは僕が他人の目を気にしているということでもある、と先輩は言う。とても偉そうだ)街中を駆け回って当たり屋のようにふるまうことだってどことなく乱暴だ。

僕は召集に当たり、部屋に大量に積みあがってスペースを埋めていたルービックキューブの様なひまわりの実を持っていくことにした。そのために部屋は急にがらんとしたけど、それは何かとてもいいアイデアに思えた。半透明になる前の僕がどんな色をしていたか、カラフルなこの立方体が決めてくれるのだと思った。

これで一つ目の問題はだいたい解決したけれど、もう一つの問題は僕が街を駆け回ることで、住人に乱暴な粗忽者と思われかねないことだ。だから先輩たちの目線が僕の手元に集中したとき、僕は言った。「皆さん、ひまわりの実を配りますので、街を駆け回るのはやめませんか?今夜は大人しく家に帰り、ご自宅にこいつを埋めてみてはいかがでしょう」

「そいつはいい」

「ヒューが珍しく良いことを言った」

口々に先輩たちは僕の機転を褒めちぎった。しかし僕は鼻が高いという気分でもなく、ひっそりとぎこちない不安を抱えていた。急いで自宅に戻ると、ひまわりの根元の部分に寄り掛かるように僕の顔をした誰かが腰を落ち着けていて、「表札を確認した?」と、当たり前のようにそんなことを言う。ひまわりは時期も弁えずに咲き誇っていて、当分枯れる気配はなさそうだった。

 

 

【一晩寝てから書く解説】

ちょうど台風が来るという話だったので冒頭から何から、こんな感じになりました。あとリビング九畳の1Kはただの僕ん家の間取りですがひまわりは別に生えてません。

 

 

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